自分の人生を取り戻したと感じた、退職後のある瞬間

自分の人生を取り戻したと感じた、退職後のある瞬間

「公務員なんて、辞める人ほとんどいないのに」——何度言われたかわかりません。

でも、実際に辞めてみて思うのは、辞めて初めて見えた景色が確かにあるということです。

40代という年齢で、安定を手放すのは簡単ではありませんでした。

けれど今、私は毎朝の空気が澄んでいること、家族と同じ時間に夕食をとれること、そして“自分の言葉で語れる仕事”に出会えたことに、ささやかな誇りを感じています。

「なんとなく」では、もう続けられなかった

20代の頃、親や周囲の勧めもあり地方公務員になりました。

地元の市役所で、市民対応や各種手続き、企画事業などを経験。

最初の数年は、与えられた業務をこなすことで精一杯。

「安定してるし、贅沢言っちゃいけない」と自分に言い聞かせながら働いてきました。

ですが30代後半に差し掛かり、同年代の友人が民間企業で昇進したり、転職で新しいチャレンジをしている姿を見たとき、ふと不安になりました。

「このまま、定年まで同じような仕事を繰り返すのか?」

「自分がやっている仕事は、誰かの役に立っているのか?」

気づけば、休日にも市役所のメールを確認し、ミスがないかを気にして眠れない夜も増えていました。

「これは、安定なのか? それとも麻痺なのか?」

そんな問いが、毎日のように頭をよぎるようになりました。

偶然の出会いが、視野を広げてくれた

転機になったのは、地元商工会の研修会で出会った40代の起業家でした。

「公務員ってさ、すごく強い経験してるんだよ。民間じゃ学べないような、ルールや仕組みづくりの部分。あれ、武器になるよ」

それまで自分のキャリアに誇りなんて持ったことがなかったので、その言葉が意外でした。

「この人のように、自分の経験を活かす道があるのかもしれない」

そんな想いが芽生え、民間転職の選択肢を本気で考えるようになりました。

調べていく中で、「地方公務員から40代で民間に転職した人」の体験談を見つけ、自分も挑戦できるかもしれないと思うようになりました。

家族の反応が怖かった。でも、伝えてみた

40歳のある夜、妻に「転職を考えてる」と打ち明けました。

不安がなかったわけではありません。

でも彼女は、驚いた顔のあと、静かにこう言いました。

「本音で話してくれてうれしい。あなたが納得できる道を選んでほしい」

その言葉が、背中を押してくれました。

私は、行政と連携している地元IT企業の“地域活性化事業部”に応募。

役所時代の経験を活かして、自治体との連携提案や、補助金申請サポートを行うポジションでした。

新しい環境で気づいたこと

最初の数ヶ月は正直、ギャップに戸惑いました。

民間のスピード感、言葉遣い、文化の違い……全部が新鮮で、全部が怖かった。

でも、自分の提案が採用されたとき、「ああ、ここでも必要とされている」と感じられたんです。

それが何より嬉しかった。

ある日、クライアントである町役場の担当者からこう言われました。

「公務員だったあなたに相談できるの、すごく安心感あります」

過去だと思っていたキャリアが、今も武器になる——その瞬間、退職への後悔は消えました。

今では、週末に子どもの学校行事にも参加でき、夕飯を一緒に食べ、休日に趣味の釣りに行く時間まである。

これが普通だったんだ、と気づくまで、ずいぶん遠回りしてしまった気もします。

安定は悪くない。でも、満足できるかは別の話

公務員という仕事に感謝しています。

経験も人脈も、すべてが自分の土台になっています。

ただ、それが「絶対的に正しい働き方」ではなかった。

安定=安心、とは限らない。

今、自分の意思で選び、考え、動ける日々があることに、充実感を感じています。

もし、この記事を読んでくれているあなたが、

「40代からなんて、遅すぎる」

「家族がいるから無理」

そんな風に感じているなら、私は声を大にして伝えたいです。

遅くなんてない。あなたが違和感を抱えているなら、それは動くべきサインです。

どんな道を選んでも、そこには気づきがあるはずです。

私のように、退職後に気づいたことがあるということを、どうか心の片隅に置いていてください。

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