30代男性・営業職から農業法人へ/妻子あり・地方移住/心情:不満・解放
「このままじゃ、俺、壊れるかもしれない」
毎朝7時に出社し、日が暮れるまで数字を追い続ける日々。営業ノルマ、会議、訪問、報告書。数字が足りなければ怒号が飛び、結果が出ても「次の目標だ」とプレッシャーが降ってくる。
妻と子どもの寝顔しか見られない生活が2年続いたある日、ふと電車の窓に映った自分の顔を見て「これはもう、違う」と思った。
仕事はできる。でも、人生はどうか?
大学を出て大手のメーカーに営業として入社。実績は出していたし、年収もそれなりだった。同期の中ではトップ層だったと思う。それでも、心のどこかでずっと、空虚感があった。
「この数字って、誰のため?」
「この商談、本当にお客さんに喜ばれてるの?」
「自分がやりたいのは、こういうことだったっけ?」
誰にも言えなかった。けれど、毎月のノルマを積み上げながら、いつの間にか「働いてるフリ」に近い感覚になっていた。
きっかけは、家族旅行だった
転職を決意する決定的なきっかけは、妻と子どもを連れて行った1泊2日の地方旅行。訪れたのは、妻の実家の近くにある自然豊かな農村地帯だった。
その土地にある農業法人が「体験農業」をやっていて、家族で参加した。土を触ること、収穫を手伝うこと、地域の人にありがとうと言われること。
久しぶりに子どもが笑っていた。妻が「こういうところで暮らすのもいいかもね」と言った。
そして何より、自分の顔が笑っていた。
農業法人に転職するという選択肢
その夜、宿に戻ってからこっそりスマホで「農業法人 転職」と検索した。地方創生の求人サイトに、その地域の農業法人が正社員を募集していた。
給与は今の6割。でも、勤務時間は8:00〜17:00。残業なし。家賃補助、移住支援あり。年に1回の研修や地域イベントへの参加も歓迎されていた。
「ここで、もう一度働くを見直してみよう」
そう決意し、3ヶ月後には退職届を出していた。
今、仕事が終わったら「ただいま」が言える
転職して半年。朝は鶏舎の見回り、午前はビニールハウスで収穫作業、午後は直売所で出荷準備や事務作業。
身体は疲れるけど、不思議と心は穏やかだ。数字に追われることはないけれど、「昨日より効率よくできた」「あの人が買いに来てくれた」そんな実感のある達成がある。
そして何より、仕事が終わったら真っ直ぐ家に帰れる。夕方に子どもと遊び、ご飯を一緒に食べて、妻と話す時間がある。
「家族と暮らす」って、こういうことだったんだと思った。
転職で失ったもの、得たもの
たしかに、給与は下がった。車も買い替えは先延ばしになった。でも、
- 心がすり減らない生活
- 家族と過ごせる時間
- 土を触る充実感
- 地域とのつながり
これらが得られた今、後悔はしていない。
最後に
転職は、逃げじゃない。違和感をごまかし続けることの方が、よほど危ない。
もし、今の働き方に疑問を感じているなら——数字から解放されたいと思っているなら、こういう分岐点もあることを知ってほしい。
あなたの人生は、あなたが決めていい。
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